
ワケもなく
お祭り騒ぎどうも。 ギャグ漫画ゲリラ・
中川ホメオパシーのちあきなおみ担当、ブロッケンです。
橋口亮輔脚本・監督の映画『
ぐるりのこと。』を観ました。 傑作です。
うだつのあがらない法廷画家の夫・カナオ(
リリー・フランキー)としっかり者で几帳面な妻・
翔子(
木村多江)。平凡な夫婦に突如訪れた危機と再生を、90年代という時代背景を通じ
て淡々と描いた大人のラブ・ストーリー。
愛する我が子を生まれてすぐに病気で亡くし、深い哀しみと喪失感、周囲の無理解に対す
る幻滅、そして“もっとちゃんとやれる筈だったのに”という強い自責の念から、次第に心を
病んでいく妻・翔子役の
木村多江の演技はただただ素晴らしいの一言。 書店の中で突如
感情の抑制が効かなくなり、本で顔を覆い隠しながらその場にしゃがみ込んで泣く場面など
は、特に胸に迫るものがありました。
そんな
木村多江を、静かに見守り続ける夫・カナオ役の
リリー・フランキーの演技がこれ
また素晴らしい。 大の男のくたびれた哀愁と諦念とある種の無責任さ、そして口に出さず
とも滲み出る妻への愛を、実に自然に体現しております。
リリー・フランキーって、
ミラク
ルタイプの頃からイイ味出してンなぁとは思っていましたが、まさかここまでとは。
そんな
リリー・フランキーが法廷画家として携わっていく様々な事件は、全て90年代に実
際に起きた事件がモデルとなっており、中でも“
宮崎勤”をモデルにしたと思われる幼女
誘拐殺人犯(
加瀬亮)のインパクトたるや絶大。弁護士の問いかけに対して『♪どっちでも
い~い~』と歌う様に、しかし真顔で答える場面などは、恐怖と狂気と憎悪と無邪気さが
渾然一体となって強烈な印象を観る者に残します。やるじゃん
加瀬亮。 ちなみにこの時の
弁護士役が
光石研なんですけど、どこにでも出て来ますね、このヒト。
と、ここで気づくのが、今作における
リリー・フランキーが、一貫して“見守る”という行為に
徹しているという点。 壊れ行く妻を、そして数々の凶悪事件を、そして変わり行く時代の
流れを、肯定も否定もせず、ただ寄り添う様に見守り続ける彼の姿に、無力さと頼りなさと、
そしてある種の誠実さを感じ取る事が出来ます。
“鬱の時代”とも言うべき現代に生きる我々の四方を、文字通り“ぐるり”と取り囲む悪意や
不幸や無理解や哀しみの数々。 それらに翻弄されながらも、人生から逃げ出す事なく
歩んでいく夫婦の、10年間の軌跡を描ききった絶望と希望の140分。 断固支持です。
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画
- 2010/01/23(土) 18:23:03|
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