
ワケもなく
モヒカン『ボーイズ・オン・ザ・ラン』《あらすじ》うだつの上がらないダメサラリーマン・田西敏行(
峯田和伸)は、弱小玩具メーカーに勤め
る29歳。 商品企画部の同僚・ちはる(
黒川芽以)に淡い恋心を寄せているが、どうアプロ
ーチしていいかわからない。 そこで彼は営業先で知り合った大手ライバルメーカーのエ
リート営業マン・青山(
松田龍平)に相談を持ちかける。 青山の手ほどきで少しずつ距離
を縮めていく田西とちはる。 しかし、風邪で寝込んでいるちはるを見舞いに行った田西は
そこで決定的な過ちを犯してしまう…。 監督・
三浦大輔。
《極私的見解》・ うう…これは痛い! 痛すぎて直視してらんない位におぞましい青春&性春模様が眼前
でこれでもかと言わんばかりに繰り広げられる壮絶な作品です。 いや僕もね、いままで映
画を観て感動したり哀しかったりして涙を流した事は多々ありましたが、悔し泣きさせられ
たのはこの『
ボーイズ・オン・ザ・ラン』が初めてでございます。 哀号!
・ 弱小玩具メーカーに勤める29歳のイケてないダメ男・田西敏行を演じるのは
峯田和伸。
青春と性春にまつわる衝動と焦燥を歌わせたら当代一の彼が 今作の主演を務めるという
のは、“幸福な結婚”としか言いようのない程のハマりっぷり。 すでに峯田氏は『
アイデン
&ティティ』や『
色即ぜねれいしょん』等で、役者としても確固たる存在感を放っておりまし
たが、その評価は今作をもって決定的なものとなったのではないでしょうか。 もはや『
銀
杏BOYZのフロントマン』というエクスキューズを全く必要としないほど、一人の優れた役
者として彼は 劇中で思いきり泣き笑いしておりました。あ、でもカラオケで
岡村孝子の『
夢
をあきらめないで』を取り憑かれた様に熱唱するさまは、紛れもなくパンクシンガー・
峯田
和伸に戻ってましたけど(´∀`)
・ そんな峯田演じる田西クンが恋心を寄せる同僚のOL・植村ちはる役の
黒川芽以が醸し
出す天然のエロスが、もう大変な事になっております。 かつて
ケラリーノ・サンドロヴィ
ッチ監督の映画『
グミ・チョコレート・パイン』においても、冴えない童貞男子のエロ妄想
を一手に引き受けるかの様なキャラクターを演じていた彼女ですが、グミチョコにおけるエ
ロスとは、所詮童貞ティーンエイジャーの想像の域を出ないような、言ってしまえば“可愛
げのあるエロス”だったワケですが、どっこい今作における
黒川芽以のエロスは圧倒的な
リアルさをもって観る者(主に男子)の股間に訴えかけてくる、いわば“今そこにあるエロス”
なのです。…ナニ言ってるか自分でもちょっと怪しくなってまいりましたが、要はまぁそんぐ
らいヤバイって事よ。 つうかまさか
黒川芽以のクチから『フェ○チオ』なんつう淫語が聞け
るとは思わなかっただよ。ちなみに先述した『
グミ・チョコレート・パイン』には、峯田もAV
男優役でチョロッと出演しております。 性春あるトコロに峯田アリ、ですな。
・ で、田西が営業先で知り合うエリート営業マン・青山(
松田龍平)ですよ。 俺ァこいつが
憎くて憎くてかなわん。 てゆうか『テメーブッ殺す!』ってな感じで劇中のキャラに殺意を
抱いたのって、実はすごく久しぶりな気がします。 そこまで感情を強く揺さぶられたって
事は、つまり演出や脚本の妙もさる事ながら、
松田龍平の芝居に、観てるコッチがすっか
り乗せられてしまってたというワケですよね。 『
恋の門』の頃と比べると、俄然演技に深み
と説得力が増したように思えます。 それにしてもこの青山って男、マジでムカつく。 好き
な女をゲーム感覚で横取りして、孕ませて、あまつさえリベンジを果たしに来た田西を逆
にボコボコにしちゃうんだもん。 圧勝ならぬ圧敗じゃないスか。 わしゃもう悔しゅうて悔し
ゅうて涙が…涙が止まらんかったとですよ!
・ といった具合に、次から次へと救いの無い展開が押し寄せる『
ボーイズ・オン・ザ・ラ
ン』ですが、そんな痛々しいドラマの中にあって、唯一の救いと云えるのが、田西を取り
巻く玩具メーカーの同僚や上司が垣間見せる“大人の優しさ”ではないでしょうか。 とり
わけ
リリー・フランキー演じる寡黙な社長・斎田のひと言『田西はクビにはさせません。
思う存分やってもらいます』はジーンと来たなァ。 『
紅の豚』じゃないですけど、カッコイ
イとはこういう事をいうんだよなァなんて、しみじみ感じ入った次第です。
・ そして今作の主題歌が
銀杏BOYZの書き下ろした同名曲『
ボーイズ・オン・ザ・ラン』
なワケですが、何一つ報われる事のないまま結末を迎えた映画のラスト、モヒカン頭の田
西が傷だらけで駆けてゆくバックでこの曲が流れ出した瞬間、えもいわれぬ興奮と感動が
こみ上げて来ます。 不甲斐無さと敗北感と喪失感、そして無尽蔵のリビドーを抱えながら
『もう遅いか?』『もう一丁だ』とギリギリの自問自答を繰り返すこの曲は、この先いつまで
も世界中のダメ男子のハートを揺さぶり続けるに違いありません。 つうかこの曲を聴いて、
そしてこの映画を観て涙した男子! 君はきっと俺と親友になれるぜ!
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画
- 2010/10/05(火) 14:05:20|
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ワケもなく
地獄大使『蟹工船』《あらすじ》カムチャッカ沖で蟹を捕り、船上で加工缶詰を作る蟹工船の博光丸。 そこで働く労働者
は、監督・浅川(
西島秀俊)の暴力と酷使に耐えながら、低賃金で重労働に従事していた。
そんなある日、新庄(
松田龍平)をはじめとする労働者たちは一斉に蜂起し、支配する者
に立ち向かおうとするが…。 原作・
小林多喜二、監督&脚本・
SABU。
《極私的見解》・
プロレタリア文学の旗手、
小林多喜二の代表作=『
蟹工船』が、およそ80年の時を
経てスクリーンに甦った!ってカンジの今作。 つうか
プロレタリア文学とかって超懐か
しいですよね。 自分、高校ン時に地歴公民の中から日本史を選択してたモンですから、
なんか必死になってこの単語を丸暗記した記憶がございます。 その程度の認識ですか
ら勿論原作は未読。 ただ単に
谷村美月ちゃんが出てるからっつう浅はかな理由でこの
たび鑑賞に至ったワケですが…うーん、どうなんだろ。 全然つまんなくはないけど、全
然胸を打つものも無かったというか。 うむむ。
・ 過酷な労働を強いる現場監督・浅川役に
西島秀俊。 目の下辺りに特殊メイクで傷痕
をつけたりするのはちょっと演出過多なんじゃないの? などと思いながらも、妙に
西島
秀俊にしっくり来る役ではありましたね。
西島秀俊の目はね、ありゃサディストの目です
よ。 あの死んだ魚のような目つきで『テメェ等にはクソ場の紙ほどの価値もねぇんだよ
!』とか非道いセリフをバンバン吐くんだもん。 マゾっ気のある女性とかにしてみれば、
コタエラレナイものがあるんじゃないでしょうかね。 フフ。
・ そんな暴君・
西島秀俊の腰巾着的なポジションでキャンキャンとわめき散らしている
ヤクザ役に、
大人計画の
皆川猿時。 つうかアレですよね、
皆川猿時と 今作の主役
である
松田龍平の組み合わせって、どっかで観た事あるなぁとか思ったら、『
恋の門』
で共演してたんでしたっけ。
恋の門…色んな意味でディープな作品でしたよね。 さら
に言っちゃえば
松田龍平と
新井浩文っつう組み合わせも『
青い春』のコンビだったりし
て、何だか妙に既視感めいたキャスティングではありました。
・
柄本時生、
TKO、そして
山本浩司 などなど、いかにもって感じの“ブルーカラー顔”
がズラリとガン首を揃える中にあって、
高良健吾の見目麗しさが段違いで際立ってお
りました。 でもさ、
高良健吾の妄想シーンの中にしか
谷村美月たんが出てこなかっ
たのには正直ガックリ。 しかも総出演時間が1~2分程度の激チョイ役。 何だよもう。
・ 『人生を安売りする者に、人生はそれ以上の支払いはしない!』っつう
松田龍平の一
言は、けだし名言だと思います。 で、こんな感じで労働者を巧妙にアジりながら、ストラ
イキ決行へと至るワケですが、こん時に労働者全員で同じシンボルマークを施したバン
ダナを巻いたのは いただけなかった。 なんだか販促用のグッズみたいで、途端に安っ
ぽく見えてしまいました。
・
SABU監督は『現代を生きる若者すべてに贈る』と鼻息を荒げていたそうですが、僕
もギリギリ現代を生きる若者なんスけど、どうにもこの映画は胸に響かなかったなあ。
メッセージどうこうっつう以前に、上述した様々な要因(
西島秀俊の大げさな目の下の
キズや、シンボルマーク入りのバンダナ等)が、物語からリアリティを殺いでしまってい
るように思えたのです。 それと、劇中の労働者達は、超過酷とはいえ仕事にありつけ
ているワケで、働きたくても働き口の無い、超就職氷河期の真っ只中を往く現代の若
者が抱える苦悩とは、根本的に種類が違いますよね。 だからイマイチ共感できなか
ったのかもしんない。 まぁでも、
西島秀俊に大声で怒鳴られたり蹴飛ばされたりした
いっつうイビツな願望を抱いた女性の方々には激しくオススメの一本でございます♪
続きを読むテーマ:映画感想 - ジャンル:映画
- 2010/07/12(月) 01:28:57|
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