中川ホメオパシー 

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松田優作 森田芳光 / 家族ゲーム

きょうだい
ワケもなく仔猫


どうも。ギャグ漫画ゲリラ・中川ホメオパシーの非実在青少年担当、ブロッケンです。

森田芳光脚本・監督の映画『家族ゲーム』を観ました。 このブログでATG関連の
作品を取り上げるのは『台風クラブ』に引き続き二本目になりますね。

高校受験を目前に控えたいじめられっこの次男・沼田茂之(宮川一朗太)に、風変わ
りな大学生・吉本勝(松田優作)が家庭教師として雇われた事から巻き起こる沼田家
の騒動を、シュールかつドライに描いたホーム・ドラマ。

まず何と言っても本作の最大の魅力は、松田優作演じる謎の家庭教師・吉本勝の
圧倒的な存在感に尽きると思います。 三流大学の7年生(!)であるという事と、ど
うやら恋人がいるらしいという事以外、一切が謎のヴェールに包まれた吉本。普通
のドラマであれば、人物描写の掘り下げが甘い等といった批判の対象にもなりかね
ないキャラ設定ですが、本作においてはその情報の少なさ、つかみどころの無さこ
そが吉本という男のミステリアスな魅力につながっているという点が非常に面白かっ
たですね。

そんな彼の不透明なパーソナリティとは対照的に、いつも小脇に植物図鑑を抱えて
いる、飲み物は一気に飲み干してしまう、暴力をふるいそうになると軽く鼻をすすり
鳴らす等々、外見的な特徴や仕草はとてもヴァリエーションに富んでいるという、そ
のちぐはぐ加減が重ねて面白い。

この、特徴的でありながらも素性の全く見えない男を名優・松田優作が演じる事に
よって、そのアンビバレントな魅力は更に倍増し、どこかユニセクシャルな振る舞い
(宮川一朗太のほっぺにキッスしたり、伊丹十三の手を握りしめる等)と相まって、
圧倒的な存在感を醸し出しております。

素晴らしい映画の条件として、キャストと劇中人物の親和性の高さ―平たく言えば
“この役はこの演者以外に考えられない”と感じられるか否かというのが挙げられる
かと思いますが、まさに本作における家庭教師・吉本勝役には、松田優作以外考え
られない位、絶妙のハマリっぷりでしたね。

本来なら家族団欒の象徴である食卓が、何故か会議室の長机の様に横長で、そこ
へ横一列に腰掛けて、互いに目も合わせず食事をするといった、ある種異様な光景
も実にインパクト大。しかもその食卓の中央の席に部外者である松田優作が居座る
事により、何ともいえないギクシャクとしたムードが漂う辺りが滑稽でもあり、どこか
不気味でもありました。 

また、足音やクラクション、そして鳩時計やテレビの音声といった実際の生活音とセ
リフ以外、音楽やBGMを一切排したドライな演出も、異様な食卓風景と併せて、ホ
ームドラマ=温和でほのぼのとしたイメージという既成概念に無言で“?”を叩きつけ
ているかの様です。 

森田芳光監督が、これらの実験精神溢れる演出の数々を通じて描いたどこかイビツ
な家族像が、劇場初公開した1983年当時よりもむしろ現代に暮らす家族のありよう
に、より多くの共通点を見出す事が出来るという事実に、今さらながら驚かされます。

そして、物語の終盤、松田優作が突如として凶暴さをむき出しにして沼田家の面々を
一人ずつ張り倒し、最後に例の長テーブルをひっくり返してその場を去っていく、いわ
ゆる“最後の晩餐”と呼ばれるシーンを経て、問題のラストシーンがやって来ます。

一見すると、春の陽気に誘われて母親(由紀さおり)と二人の息子達が部屋の中で眠
りこけているだけの、取るに足らないシーンの様にも見えますが、ただ一人父親(伊丹
十三
)の姿だけがそこには無く、何故か上空からはヘリコプターのプロペラ音が不穏
に響き渡っています。 

ここではたと、直前の“最後の晩餐”の最中で父親と長男・慎一が口ゲンカになり、そ
の会話の中で慎一が“金属バット殺人”をほのめかしていた事を思い出し、“ひょっと
すると伊丹十三は、息子達の手で殺されてしまったのでは…?”という、恐ろしい想像
が頭をよぎる、と。 そしてこの場合、ヘリコプターの音は殺人現場に押し寄せたマス
コミの取材ヘリの音という事になるのです。 …怖っ!

…この謎多きラストシーンに関しては、今まで実に様々な解釈が映画ファンの間でな
されてきたそうで、同じ団地に住んでいる若奥さん(戸川純)が由紀さおりに語った『う
ちの亭主の父親が危篤なんだけど、部屋で亡くなった場合、棺桶がエレベーターに入
りきらないので、どうやって外へ運び出せば良いのか?』というセリフに呼応したラスト
―つまり、ヘリに棺桶を乗せて団地の外へ運び出しているという解釈もあれば、この映
画の撮影当時、森田芳光監督がフランシス・コッポラ監督の映画『地獄の黙示録
にハマッていて、どうしてもラスト・シーンにヘリの音を使いたかっただけで、特別深い
意味は無いと捉えている方もいます。

いずれにせよ大いに想像力を掻き立てられ、深い余韻が胸に残る、素晴らしいラスト・
シーンですよね。 同じく謎に満ちたエンディングが話題を呼んだ『新世紀エヴァンゲ
リオン
』(今はエヴァンゲリヲンだっけか)より先駆けること十数年前、すでに我が国に
もこのような映画が存在したとは…。 おそろしく前衛的な作品だと思います。 傑作。


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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2010/03/22(月) 19:22:13|
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工藤夕貴 三上祐一 相米慎二 / 台風クラブ

やったぜ!
ワケもなくやったぜ!


どうも。ギャグ漫画ゲリラ・中川ホメオパシーの熊田曜子担当、ブロッケンです。

相米慎二監督の映画『台風クラブ』を観ました。  今から四半世紀も昔、1985年の
作品でございます。 いやぁ、ブッ飛ばされました。

東京から程近い地方都市の中学生男女が、週末にかけて接近してきた大型台風に
よって、一晩校舎に閉じ込められてしまう…という、字面だけ追うと実にシンプルなあらすじ。

新進気鋭のクリエイター集団“ディレクターズ・カンパニー”がシナリオを公募した際に
寄せられた加藤祐司氏のオリジナル脚本に強く触発された相米監督が、自ら映画化を
買って出たというエピソードが物語る通り、この『台風クラブ』には、スタッフとキャストの
情熱と衝動、そして奔放な実験精神が渦巻いております。

台風の目の中に入り、一瞬だけ雨が止んだのを見計らってグラウンドに飛び出した子供
達が、下着姿でわらべの『もしも明日が』を歌い踊っている内に、再び凄まじい暴風雨に
見舞われるも、そのままずぶ濡れになりながら狂った様にはしゃぎ回るシーンは、思春期
特有の心のゆらぎ、そして台風の持つ暴力的なエネルギーが渾然一体となった、今作の
ハイライトでしょう。

相米監督は、この混沌としたシーンを長回し撮影(カット割りせずに、一度に撮影する事)
によって真空パックする事で、少年少女達の狂乱と躍動感を、実に生々しく活写する事に
成功しています。 

校舎には残らず、単身東京へ向かった理恵(工藤夕貴)もまた、ずぶ濡れになりながら『もし
も明日が
』を歌うのですが、ハイテンションで歌い、踊り狂うグラウンドの子供達とは対照的
に、さめざめと泣きながら、一人寂しく歌う姿が何とも寂しげ。

そんな工藤夕貴が東京から帰る道すがら、オカリナを吹きながら左右にゆらゆらと揺れる、
全身白ずくめのカップル(?)に出くわすシーンが圧倒的に意味不明! 突如異世界に放り
出されたかの様な戦慄を覚える事間違いなしの迷シーンです。
 
工藤夕貴の抱える不安とゆらぎを、シュールに視覚化しようと模索した結果、かように珍妙な
演出に辿り着いたのではないかと、僕なりに解釈したのですが、相米監督亡き今となっては、
最早誰もこのシーンの真意を精確に説明する事など出来ないのでしょう。  …それにしても、
オカリナは、朝吹くものなんです』って、どういう意味なんだろ? 謎すぎる。

ずぶ濡れになりながらの“台風ストリップ”から一夜明け、積み上げた机の上に腰掛けた三上
祐一
が、思い詰めた表情で他の子供たちに語りかける場面の静謐さと、前日の夜の狂騒の
落差が実に不気味です。

この時の三上祐一の『俺達には、厳粛に生きる為の“厳粛な死”が与えられていない。
だから、俺が死んでみせてやる。 みんなが生きる為に
』というセリフには心底グッと来ま
したね。 僕、自殺願望とかって全くもって皆無なんスけど、こんなにイカしたセリフを残して
颯爽と死ねたなら、どんなにか素敵だろうって思いますよ、ええ。

そうそう、今作にはバービーボーイズの曲が挿入歌として使われているんですけど、バービ
ーボーイズ
、つい先日まさかの復活を果たしましたよねぇ。 いやはや、杏子姐さんとコンタ
ハスキーヴォイス合戦がまた聞ける日が来ようとは。

えー、この『台風クラブ』という映画を、“面白い / つまらない”といった単純な二元論で語る
のは、それこそ非常につまらない行為なんじゃないかなと思います。 しかし、“脳裏に焼き付く
か否か”という事であれば、今作ほどくっきりと“焼き付く”映画って、他にそうは見当たらないと
断言できますね。  うーん、恐るべし、ATGスピリット。


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  1. 2010/02/02(火) 14:05:08|
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